【映画感想】『LAMB/ラム』 -禁断《タブー》が産まれる

ヴァルディミール・ヨハンソン・監督


山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。

ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、

羊ではない何かが産まれてくる。

子供を亡くしていた二人は、

"アダ"と名付けその存在を育てることにする。

奇跡がもたらした"アダ"との家族生活は

大きな幸せをもたらすのだが、

やがて彼らを破滅へと導いていく—。

(LAMB公式ホームページより)
ヴァルディミール ヨハンソン・監督

感想



『ミッドサマー』、『へレディタリー/継承』など話題作を多く生み出しているA24スタジオの最新作とのことで鑑賞。






霧たなびくアイスランドの高地にて、

淡々と紡がれる、“タブー”と暮らす羊飼い夫婦の生活。



新たな神話の創出

、というキーワード。そしてポスターの構図から既に察せられるが、LAMBはキリスト教を根底に据えている。羊は神の子羊であり、構図は聖母子像。そしてアダの妊娠はクリスマスの夜。

…そう思ってキリスト教中心に考察をしようとしたが、どうも上手くいかず、途中でギリシア神話の線で考えた方が個人的には納得いく、と気付いた。

というのも、ギリシア神話に登場する、踊りと音楽が趣味で大変好色な牧神「パン」

彼がアダ、アダの父親と考えると色々と納得がいくのだ。

「パン」は、羊飼いと羊の群れを監視する牧神で、額にはヤギに似た2本の角、上半身は毛深く髭を生やし、下半身は2本のヤギの脚そのものの半人半獣の姿(LAMBでは半分羊だが)。またパンは「パニック」の語源であり、混乱恐怖の象徴。

まさにこの物語を象徴するものだ。

(アダは「サテュロス」の線もある。特徴は花冠、恥ずかしがりやで臆病。音楽好き。アダちゃん花冠可愛かったし音楽好きだったね。)

また、物語に性的なシーンが含まれているのも、「パン」の暗喩だろう。

マリアは最初からアダ大好きだったが、イングヴァル、ぺートゥルがアダに触れた後からアダへの態度が変わったのも、恋愛に事欠かない「パン」であるアダは、触れると魅了される魔法を持っているのかもしれない。


しかし、ギリシア神話中心で考えると納得いくところは多いものの、何故、物語の舞台”アイスランド”で伝わるアイスランド神話(北欧神話)ではなく、共通点の少ないギリシア神話を用いて映画を創ったのかが分からない。

ギリシア神話中心ではなく、まだキリスト教中心の方がアイスランドで語られる可能性はある。(ちなみにアイスランド神話に羊が登場する話はない)

キリスト教であると羊は重要な意味を持つし、マリアの名前の意味も分かる。

それともLAMBはキリスト教とギリシア神話を組み合わせた新しい御伽噺を見せているのだろうか…。




映像はただひたすらに美しく、変わらない。そして静かだ。会話も無い。

そんな日々が終わりを告げるのは物語終盤。

Ram Man、アダの父親が、アダを夫婦から取り返しにやってきた。

その姿はまるで悪魔だが、キリスト教世界で羊の悪魔というのは聞いたことがない。(キリスト教世界における近しい存在は山羊の頭に人間の体を持つバフォメットか。)

Ram Manはアダの目の前でイングヴァルを射殺。そしてアダを連れ去る。

そして映画は終わる。



物語のラストでマリアは空を見上げ、自らの腹を見下ろす。そして息を吐く。

難解だが、きっとこれは(キリスト教であるとすると)再びの受胎告知であろう。


まだ、悪夢は終わっていないのかもしれない。




ヴァルディミール ヨハンソン・監督



※以下感想。




何よりも、アダちゃん天使か!というくらい可愛い。

実際は悪魔の贈り物なのだが。

アダちゃんが可愛い以外の感想としては、個人的には微妙...だったのだが、海外のレビューサイトRotten Tomatoesを見てみるとやっぱり微妙。よかった。

不気味で不穏な御伽噺として見るといいのかな、そんな世界は楽しめる。


難しかった。

羊たちの演技は素晴らしかった。


制作紹介

主演・製作総指揮を務めるのは『プロメテウス』、『ミレニアム』シリーズで知られるノオミ・ラパス。監督は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当し、本作が長編デビューとなる北欧の新たな才能ヴァルディミール・ヨハンソン

『Lamb/ラム』は衝撃的な設定の中にもリアリティを持った世界観を構築したことで世界から称賛を浴び、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門でPrize of Originalityを受賞、アカデミー賞®国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど批評家からも高い評価を受けた。

ヴァルディミール ヨハンソン・監督



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