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こんにちは、lamです。今回は『コンビニ人間』村田沙耶香・著についてご紹介します。
Contents
内容紹介
本のあらすじ
「普通」とは何か?
(文藝春秋より)
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。
累計160万部突破&39カ国語に翻訳(2023年7月現在)。
米国〈ニューヨーカー〉誌のベストブック2018に選ばれるなど、
世界各国で読まれている話題作。
主人公である古倉恵子は、幼少期から他人とズレた子供でした。
自分の意志で判断した言動は間違いだと指摘され、
人のためにと思った行動は相手を困惑させます。
彼女はどうしたらそれが”治る”のか見当もつかないまま、成長してしまいました。
そんな時、コンビニのオープニングスタッフ募集の張り紙が目に入り…
そこは、恵子を”普通”の人間にしました。
普通の人間とは何か、
現代社会において普通に生きるとはなにか、問いただす作品。
物語の中で語られる”普通”すら、”普通”のことではないかもしれません。
その答えは、あなた自身で。
こんな人におすすめ
なんだか生きづらいと感じている人
人から指摘されがちな人
普通とは何か、知りたい人
著者紹介
著者である村田沙耶香(むらた・さやか)さんについて、
1979年千葉県出身。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。同作は累計発行部数100万部を突破した。その他の小説に、『星が吸う水』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『地球星人』『生命式』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』等、多数の著書があります。
作風としては、世の中の常識を疑い、「普通」とは何か、凝り固まった価値観を揺さぶるような小説を次々と発表します。作家仲間からは「クレイジー紗耶香」と呼ばれています。
『コンビニ人間』は、2019年にNHK-FM「FMシアター」にてラジオドラマ化されています。
※以下感想・考察。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。
『コンビニ人間』の感想・考察
登場人物全員気持ち悪く感じてしまいました。
これは同族嫌悪なのか、何なのか...。
ただただ古倉恵子という人間がどのような結末を迎えるのかが気になって、最後まで読み進めてしまいました。
読了感は最悪。
ですが、面白い小説だったと思います。
古倉恵子という人間
主人公『コンビニ人間』の古倉さん、彼女はどこまでも"普通"とは程遠い人間です。
本当の感情を表に出さないその姿は、薄気味悪さすら感じます。
しかし、彼女が抱える苦悩は、共感し得るものです。
普通じゃないと思われている彼女の悩みがとても”普通”なところは、とても皮肉です。
恐らく彼女の悩みは、この日本という現代社会に生きる人間ならば少なからず感じたことのある苦悩なのではないでしょうか。
その場に馴染むために共感をする。
空気を読んで行動する。
その場の規則に従う。
周囲の人に”変な人”と思われないために、”普通”とされている行動をする。
それは、無意識に本当の自分を殺していることに他なりませんが。
しかし、そうしないと色々と”面倒くさい”。
物語の結末は古倉さんにとって最高のハッピーエンドだったと思います。
彼女はコンビニでしか生きられない生き物なのですから。
コンビニを通じて”普通”の人間になれるのですから。
白羽という存在
加えて物語を面白く彩るのは、やはり白羽の存在でしょう。
人として本当に最低な人間として描かれている白羽ですが、
“異質”な古倉さんという存在と違い、白羽はまだ”普通”を保っています。
30歳までに結婚という価値観、正社員ではない事への恥。
彼はただ、現実問題”普通”でいるのに苦労をしているだけ。
だから、同期のバイト仲間からは負け組扱いはされているものの、まだ”こちら側”の人間として見てもらえています。
古倉さんはというと、そんな白羽と生活を共にすることでやっと”普通”の価値観を享受し、他者から”普通”の人間として見てもらえることになります。
はじめは古倉さんと同じ"異質"な人間かと思われた白羽も、じつはそうではないとわかることで、
物語の中で白羽と古倉さんが比較され、より古倉さんの異常性が強調される結果となりました。
古倉さんにとっての"コンビニ店員"とは
古倉さんにとって、コンビニ店員になるとはどのようなものだったのでしょう。
コンビニバイトというと、恐らく多くの人が一度はバイト候補に選ぶような、”普通”のバイト先でしょう。
“普通”というのは、何か特殊業務を行うわけでもなく一般的に難しくないと思われているという点で。(実際、想像よりも大変という事は重々承知しています。)
また、コンビニは現代社会において必須なものです。もはや多くの人間の生活の一部です。
そんなに必要なのかという程に街に乱立し、当たり前のように日常に存在します。
つまりコンビニという世界は、古倉さんにとっては最も普遍的な社会の寓意だったのではないでしょうか。
コンビニは所謂世の中の“普通”であり、
“普通”の人間の生活の一部であり、
なんと“普通”の人間になれるマニュアルまで完備されています。
そんなコンビニで働くことは、古倉さんにとってはまさしく“普通”の人間になるための術だったのでしょう。
しかし、読後に本書について考えていると、改めて思い直します。
古倉さんは本当に異質な存在であったのでしょうか。
“普通”になろうとしている古倉さんは特段異質な人というわけではなく、当たり前に現代社会に存在して普遍的な悩みを持つ”普通”の人でもある気がしてなりません。
"普通"とはなにか、考えさせられる作品でした。
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