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【書評】綾辻行人『水車館の殺人』の要約と考察/追想の殺人

綾辻行人による「館」シリーズ。その第2冊目がこちら『水車館の殺人』です。本書は過去と現在を行き来する構成が特徴的な作品でした。都市の喧騒から離れた場所に位置する、水車の音が響き渡る古城のような館そこに住まうは孤独な仮面の主人と、可憐な少女静かに暮らす彼らの日々は、ある日終わりを遂げますそれは惨劇の一日その日は一年に一度、4人の訪問者が現れる日次々と起こる不可解な事件に、館は恐怖で包まれますそして現在、あの日と全く同じ日付の一年後、あの日と同じように、館には4人の訪問者が現れましたあの日と同じ、惨劇の一日が、また始まる――過去と現在の同じ日を行き来して、謎を解き明かす新本格ミステリ中世の雰囲気を持つ館を舞台に、推理を楽しみたい方に是非おすすめします
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【書評】織守きょうや『花束は毒』の要約と考察/悪人は必ず罰せられるべきか

「僕」こと木瀬芳樹は、とても正義感の強い主人公です。従兄が虐められていることに気が付いたら、これ以上いじめられないように働きかけ、昔お世話になった大切な人の元に脅迫状が届いたら、自らのお金を使ってまで犯人調査を探偵に依頼します。「悪人を罰することは必ずしも人の役に立つ」「自分がして欲しいことは、相手もして欲しいことに決まっている」木瀬は、検事正である父親に倣い、悪を憎み、罪は正しく裁くを信念として行動をしています。それが絶対に正しい事なのだと信じて。それ以外の可能性があることを信じていない彼は、例外が起こったときにどういう対応をするのでしょうか。本書は、《罪を正しく裁く、という事はどんなに難しいか》考えさせられる作品です。
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【書評】夕木春央『方舟』の要約と考察/犯人=生贄

閉ざされた地下施設で、殺人事件が起きました。前日に起きた地震の影響で出入口は塞がれ、地下水が流入し水没が間近な地下施設で。地下から脱出する方法は1つだけ、ただその方法を使うと、1人が無残な死に方をすることになります。しかし1人を生贄にすれば、他の全員が助かります。誰を生贄にするべきか、それは明らかです。緊急事態の地下施設で殺人を犯した、殺人犯を生贄にするのが妥当でしょう。地下施設が水没するまで1週間、何としても犯人を見つけ出さねばなりません。犯人=生贄です。
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【書評】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』の要約と考察/誰の嘘を信じますか?

『六人の嘘つきな大学生』は、新進気鋭なIT企業「スピラリンクス」の内定を貰うための就職活動が主に書かれます。「スピラリンクス」に入社すれば初任給破格の五十万円、まさに人生が「変わる」。そんな人生の分岐点に立つのは就活生、六名。この六名は五千人以上の学生たちの中から選抜された、まさに優秀な就活生です。その中から誰が選ばれるのか。どんな人が選ばれるのか。どうやって選考するべきなのか。就職活動とは、自分という人物を理想の人物という嘘で固め、その嘘が評価される場です。完璧に嘘で自らを塗り固められた人が、内定を得られます。しかし本編は、そんな就活の様子を映すだけでは終わりません。その完璧に練られた嘘が、選考中に《六通の封筒》によって破壊されます。その《六通の封筒》には、完璧であったはずの《六人全員分の過去の悪事》が、告発文として記されていたのです。告発文がその場に現れた時、完璧な人間たちはその塗り固められた嘘を無理やり剥がされてしまいます。しかしここは選考の場。冷静に嘘を重ね、時には過去を認めて誠実さを装い、彼らはひたすらに内定をつかみ取ろうとします。この作品のテーマは『嘘』嘘に嘘を重ね、内定をもらった嘘つきは誰なのでしょうか。
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【書評】芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』の要約と考察/悪いことをしたから悪いことが起きるとは限らないんだよ

あなたには、あの時の決断が、取り返しのつかない事態に陥った経験はありませんか?その決断自体はちょっとしたものです。「あの時それを渡さなければ」「あの時念のため最後に確認をしておけば」「あの時早めに報告すれば」「あの時見栄を張ったりしなければ」こんなことにはならなかったのに・・・。本書は、物語の中で沢山の決断が求められます。物語の主人公たちはその決断に後に後悔し、「あの時こうしておけば」と自らの行いを反省します。読者はこの物語を読んで、主人公の決断について意見を述べたくなることもあるでしょう。しかし、物語の中で起こる決断と結末は、現実に誰にでも起こり得ることです。もし自分が同じ立場に置かれたら、正しい決断が出来るのでしょうか。本書は心理的な転落を上手く表現した短編集です。日常に潜むイヤミスが好きな人におすすめします。
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【書評】雨穴『変な家 2 ~11の間取り図~』の要約と考察/家を見ると、そこに住む人間の本質が見えてくる

家を見ると、そこに住む人間の本質が見えてくる。家の間取りは、一般的にそこに住む人間が使い易いように設計されます。その人の生活スタイルや習慣、好みや趣向が反映されて、間取りはつくられるものです。しかしごくたまに、普通に生活を送るには不便な、不可解な間取りも存在します。例えば「行先のない廊下」とか――。そんな不可解な間取りを収集したのがこの本。本書は、著者本人である主人公“雨穴”さんによるインタビュー形式で、不可解な間取りに隠された謎を解き明かすモキュメンタリーです。大抵のものには理由があります。“それ”がつくられた意図があるはずなのです。その意図を読み取ったとき、そこには恐ろしい真実が浮かび上がってきます。
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【書評】東野圭吾『あなたが誰かを殺した』の要約と考察/愛する家族が奪われたのは偶然か、必然か

今作は東野圭吾による”加賀恭一郎シリーズ”第12作目。”加賀恭一郎シリーズ”が好きな人も、今作が初めての方も、どなたでも楽しめます。殺人の舞台は別荘地。別荘を所有するセレブたちによるパーティが行われたその晩、連続殺人事件が起きます。転じて舞台は別荘地近くのクラシックホテル。レストランで優雅に食事をとる若い男性は、自らを別荘地の連続殺人犯だと名乗っていました。しかし彼は、事件の詳細は語らず、黙秘を貫いています。この殺人は無差別なのか、それともセレブ達に対する怨恨なのか。
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【書評】道尾秀介『きこえる』の要約と考察/あなたの「耳」が推理する

本書は5篇から成る短編集であり、どの作品にも音声を収録したQRコードが掲載されています。この音声は物語の「音」。登場人物たちの会話、物音。読者に語り掛けてくるこの「音」は、物語を推理するための鍵となり、真相でもあります。まだ見ぬ読書体験をしたい方に是非おすすめします。文章と音声を掛け合わせた異色ミステリ本作は、文章と音声を掛け合わせた異色のミステリです。表題作『聞こえる』は、登場人物と同じ音声を読者に聞かせることで、まるで物語の登場人物になったかのような感覚を味わえます。『にんげん玉』は、文章を読んだ時に思った物語の真相が、音声を聞く事でひっくり返りました。『セミ』は、音声の遠近感を上手に利用し、一つの音声で二つの解釈を生み出しました。『ハリガネムシ』も音声の絶妙なゆらぎによって結末が推理出来る仕掛けになっています。『死者の耳』は、物語の答え合わせが、音声を聞く事によって察せられるようになっていました。物語における音声の効果は、どの話もとても良く考えられていると思いました。ただ、正直な感想を述べると私には少し合いませんでした。収録されている音声を聞く事で謎が解ける、という仕掛けは面白く、全五篇それぞれ仕掛けが違う、という点も飽きさせず楽しく読めたのですが、
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【書評】綾辻行人『十角館の殺人』の要約と考察/その1行は事件を解決に導く

綾辻行人といえば「館」シリーズ。その第1冊目がこちら『十角館の殺人』です。本作品は国内ミステリの傑作の1つとして知られています。ある日、建築家 中村青司の幽霊が出ると聞きつけ、大学のミステリ研に所属する青年たちが孤島に訪れました。その孤島の名は"角島"。かつて凄惨な事件が起きた現場です。S半島J崎沖、角島の中村青司邸、通称青屋敷が炎上、そして全焼。焼け跡から、中村青司と妻の和江、住み込みの使用人夫婦の計4人が死体で発見された。4人の死因は一様ではなく、加えて和江夫人の左手首から先は見つからなかった。青年たちは角島にある中島青司が設計した十角形の建築『十角館』に滞在し、かつて孤島で起きた事件の推理に勤しみます。彼らはお互いを著名なミステリ作家のあだ名で呼び合い、暫く孤島での生活を楽しんでいましたが、やがて、一人、また一人と青年たちは殺されていきます。
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【書評】五十嵐律人『不可逆少年』の要約と考察/殺人犯は13歳、法は彼女を裁けない

不可逆少年=可塑性の逆、やり直せない少年これは例え話ですが、もしもあなたの大切な人が殺されて、犯人が未成年であった為、無罪を宣告されたとしたら。あなたはそれを赦ゆるすことが出来るでしょうか。赦ゆるせる人はとても少ないでしょう。実際、赦ゆるせるはずがありません。殺人は事実なのに。しかし、現代の我々の生きる日本の法律では、子供という理由だけで赦ゆるされます。「子供はまだ、精神的に未熟だから」子供は成長する、多くのことを経験すればそれだけ性格だって変わる。一年後には、別人みたいになる。どれだけ反省の見込みのない少年でも、環境を変えて自分を見つめなおさせれば、「絶対にやり直せない」と言い切れる少年はいないから。本当に、そうなのでしょうか。
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