【書評】三浦しをん『舟を編む』の要約と考察/辞書とは、言葉の海を渡る舟だ
辞書は、言葉の海を渡る舟だ。膨大な量の言葉の数々を大海原と例え、言葉を選び取る為の“道しるべ”を舟で例える。人は、思いを誰かに届けるために無数の言葉の中から、適切な言葉を選び取る。もっとも正確に、心の内の思いを伝えるために。辞書とは、大海原のように広がる無数の言葉の中から、より心に相応しい言葉を選ぶ手掛かりとなるものだ。この物語は、そんな辞書を編纂する辞書編集部で働く人々の情熱を描いた物語です。辞書を一から編纂する大変さを、リアルな人間模様を絡めて語られます。辞書編集部で働く人々はさほど特別な人々ではありません。普通の人のように生活をし、仕事に悩み、恋をします。ただ、普通の人と異なるのは、少しだけ言葉と深く向き合っているだけ。そんな言葉に魅入られた人間の紡ぐ言葉は、どこかこだわり深く、変幻自在な生き物のように、感情豊かに感じられます。この物語を読んだ後は、言葉に対して少なからず意識するようになるでしょう。そして辞書に対しても、なんだか愛らしく感じるようになります。