【書評】宇佐見りん『推し、燃ゆ』の要約と考察/あなたにとっての「背骨」は何ですか?
私には”推し”というものがいない。本書を手に取ったのは、”推し”がいる人々の気持ちを追体験したいと思ったからだ。この本を読むことで恐らくそれは達成できた。主人公は学校にも家庭にもバイト先にも居場所がないと感じている女子高生あかり。そんな彼女の生きがいはアイドルである“推し”を“推す”こと。“推す”ことが彼女の人生の唯一の生きがいであり存在する意味だった。推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。(本文より)本書は、この衝撃的な一文から始まる。推しが推せなくなる。あかりは絶望した。推しが燃えたことで、ただでさえままならないあかりの人生は更に転落を始める。