【書評】シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』の要約と考察/夢が覚めても悪夢の中
悪意に満ちた作品でした。メリキャットが創り出した美しき悪夢の世界に迷い込んだかのような、あくまでも彼女の視点で語られた物語でした。夢が覚めても悪夢の中この物語は果たして現実だったのでしょうか。メリキャットの主観でしか物語が語られないので、悪意に満ちた村人や卑しいチャールズ、美しいと云われているお城でさえ、本当にそういうものであったのか疑問に思います。メリキャットは作中お城が素晴らしい場所のように語っていますが、恐らくはそうではないですよね。本当に素晴らしいと思っていたのならば一家を毒殺していないはずです。察するに、メリキャットは家族から虐待を受けていたのではないでしょうか。ただ姉だけは優しくしてくれた。だから愛する姉を除いた全員を毒殺し、好きな人しかいない幸せな世界を創り上げた。そうして生活するうちに過去の記憶も塗り替えられ、まるで素晴らしい一家だったかのようにメリキャットは思い出すようになります。本当は幸せな一家でありたかったのでしょうね。