
【書評】村田沙耶香『生命式』の要約と考察/正常は発狂の一種でしょう?
本作は、現在の常識から少し外れた人々が登場する短編集です。本ページではその中から、表題作である『生命式』について書評しようと思います。あなたは、現在のお葬式のかたちに疑問を覚えたことはありますか?お葬式とは、故人の死を悼み、ご冥福を祈り、別れを惜しむための儀式です。故人の親族やかつてお世話になった人たちが集まり、厳かに故人の生前を思い出す為の場でもあります。私たちは、その行為に特に何も思うことは無く、伝統として繰り返します。それが故人の為を想い、【最も礼を示したかたち】であるから。しかし、もし30年後、故人を食べることが一般的な世の中になっていたとしたら、あなたはその常識についていけますか?「いやいやそんな非常識な、失礼にも程がある」そう思う人は、今一度よく考えてみてください。故人に生前とてもお世話になったのに、ただ火葬してお墓に埋めてしまうことは、果たして故人に対し、【最も礼を示したかたち】なのでしょうか?大切なことを言い忘れていました。『生命式』とは、故人を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行う儀式です。この儀式が表すのは、肉を食べながら故人を弔い、その死から生を生みだすということ。人間はいつか死んでしまいます。しかしその死が次の生に繋がり、その行為が永遠に紡がれていくとしたら、それは最も故人に礼を尽くし、かつ人間の原理に則した正常な行為なのではないでしょうか。『生命式』とは、命から命を生む、新しい弔いのかたちです。