【書評】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』の要約と考察/誰の嘘を信じますか?
『六人の嘘つきな大学生』は、新進気鋭なIT企業「スピラリンクス」の内定を貰うための就職活動が主に書かれます。「スピラリンクス」に入社すれば初任給破格の五十万円、まさに人生が「変わる」。そんな人生の分岐点に立つのは就活生、六名。この六名は五千人以上の学生たちの中から選抜された、まさに優秀な就活生です。その中から誰が選ばれるのか。どんな人が選ばれるのか。どうやって選考するべきなのか。就職活動とは、自分という人物を理想の人物という嘘で固め、その嘘が評価される場です。完璧に嘘で自らを塗り固められた人が、内定を得られます。しかし本編は、そんな就活の様子を映すだけでは終わりません。その完璧に練られた嘘が、選考中に《六通の封筒》によって破壊されます。その《六通の封筒》には、完璧であったはずの《六人全員分の過去の悪事》が、告発文として記されていたのです。告発文がその場に現れた時、完璧な人間たちはその塗り固められた嘘を無理やり剥がされてしまいます。しかしここは選考の場。冷静に嘘を重ね、時には過去を認めて誠実さを装い、彼らはひたすらに内定をつかみ取ろうとします。この作品のテーマは『嘘』嘘に嘘を重ね、内定をもらった嘘つきは誰なのでしょうか。