【感想】植松三十里『帝国ホテル建築物語』の要約と書評/帝国ホテルを巡る熱き男たちの物語
愛知県の野外博物館・明治村には、多くの明治、大正時代の建物が移設、復元されて公開されている。
まるで明治時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わいながら、四季折々の自然とどこかからか聞こえてくる汽笛の音を楽しみながら園路を進むと、最初に、石造りの重厚な建物と出会える。
それは帝国ホテル。
温かい風合いの黄色いレンガの外壁と、大地にどっしりと構えるその姿、大谷石やテラコッタに彫刻された繊細な幾何学模様はかつて日本を代表したホテルとしての威厳を保つ。
現代の姿は中央玄関とロビー部分だけだが、それだけでも伝わる、このホテルには熱い歴史がある。
帝国ホテルの初代支配人である林愛作、設計に関わったアメリカの巨匠フランク・ロイド・ライトと、その弟子であり将来著名な建築家となる遠藤新。
帝国ホテルの建設に深く関わった男たちの物語が、本書では語られる。
日本人の目には西洋的に映り、西洋人の目には日本的に感じられる、
世界のどこにもない魅力的なホテルを目指してつくられた帝国ホテル。
支配人・林愛作は、そんなコンセプトを実現できる建築家として、フランク・ロイド・ライトを推した。
その推薦の理由を語るには、まずはライトの建築の特徴を知ることが必要だろう。