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【書評】萩原規子『西の善き魔女①セラフィールドの少女』の要約と考察/夜空に輝く星、最果ての塔の天文台で

この物語は王道ファンタジーです。夜空に煌めく星や月を背景に、少女フィリエルの冒険譚が描かれます。初めての舞踏会、まるでシンデレラかのような水色のガウンを着て、憧れの王子様とのダンスを楽しむ、転じて巻き込まれる女王の後継者争い、そして明かされる、平凡な田舎の少女が王家の血を引いているという心躍る設定。辺境の塔で行われる禁忌の研究。物語に紡がれる全てが乙女心くすぐります。初めてこの物語を読んだのは中学か高校の時でしたが、改めて読み返したくなった為再購入しました。そして、今再読しても思います。この物語においてルーンという存在は素晴らしいです。当時多くの少女をときめかせたのではないでしょうか。かく言う私もその一人です。『西の善き魔女』は、王道ファンタジーを思わせるその世界観が魅力ですが、それを引き立てる登場人物たちの人物描写の豊かさが本当に見事です。かの『赤毛のアン』を思わせる天真爛漫で空想が好きな主人公フィリエルの成長を追いながら、そんなフィリエルを一途に愛しつつも、禁忌と呼ばれる研究を未来のために守るルーン。アデイルも良いキャラクターです。女王候補の一人であり、儚げで可愛らしい深層の御令嬢、かと思いきや、中身は親友の為なら強い意志を持ち何でもこなす心強い人物。その他にも魅力的なキャラクターが数多く登場し、その個性が物語を形作っています。
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