山本周五郎賞

ミステリ

【書評】原田マハ『楽園のカンヴァス』の要約と考察/絵を見る、ということ

もしも自らの大切な人が不治の病を患っていて、それを治す治療法が見つかったとしたら、あなたはどうするのでしょうか。多くの人は、その治療法に希望を託し、大切な人を助けようとするでしょう。どんな治療法でもいい、たとえ一縷の希望であっても、出来ることは全て試すのでしょう。それが大切な人の為になるのなら。この物語の両親もそうでした。虚弱児として生まれた主人公ちひろ。両親はちひろの為に病院を駆け巡り、治療法を探します。しかし、中々治療法は見つからず、ただ日々は過ぎていきます。
ミステリ

【書評】米澤穂信『満願』の要約と考察/人間の心の闇を覗き見る

表題作である『満願』をはじめ6編から成る短編集。短編集なのですが、それぞれの物語がまるで一冊の本を読んだかのように重厚でした。本作は一貫して人間の心の闇を描いています。作中ある人は自らの信念を貫き通すために、またある人は秘密を守り切るために、もしくは心が弱すぎるがために、一線を越えてしまいます。どの物語も犯人を暴くようなミステリではありませんが、真相に近づくにつれて、読みながら感じる違和感がどろどろとした恐怖に変化します。また、題材が全て異なりトリック、結末もどれも鮮やかなため永遠に読んでいたい没入感を覚えました。上質な短編ミステリを探している方におすすめできる小説です。