【書評】米澤穂信『満願』の要約と考察/人間の心の闇を覗き見る
表題作である『満願』をはじめ6編から成る短編集。短編集なのですが、それぞれの物語がまるで一冊の本を読んだかのように重厚でした。本作は一貫して人間の心の闇を描いています。作中ある人は自らの信念を貫き通すために、またある人は秘密を守り切るために、もしくは心が弱すぎるがために、一線を越えてしまいます。どの物語も犯人を暴くようなミステリではありませんが、真相に近づくにつれて、読みながら感じる違和感がどろどろとした恐怖に変化します。また、題材が全て異なりトリック、結末もどれも鮮やかなため永遠に読んでいたい没入感を覚えました。上質な短編ミステリを探している方におすすめできる小説です。