【書評】芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』の要約と考察/悪いことをしたから悪いことが起きるとは限らないんだよ
あなたには、あの時の決断が、取り返しのつかない事態に陥った経験はありませんか?その決断自体はちょっとしたものです。「あの時それを渡さなければ」「あの時念のため最後に確認をしておけば」「あの時早めに報告すれば」「あの時見栄を張ったりしなければ」こんなことにはならなかったのに・・・。本書は、物語の中で沢山の決断が求められます。物語の主人公たちはその決断に後に後悔し、「あの時こうしておけば」と自らの行いを反省します。読者はこの物語を読んで、主人公の決断について意見を述べたくなることもあるでしょう。しかし、物語の中で起こる決断と結末は、現実に誰にでも起こり得ることです。もし自分が同じ立場に置かれたら、正しい決断が出来るのでしょうか。本書は心理的な転落を上手く表現した短編集です。日常に潜むイヤミスが好きな人におすすめします。