道尾秀介

ミステリ

【書評】道尾秀介『きこえる』の要約と考察/あなたの「耳」が推理する

本書は5篇から成る短編集であり、どの作品にも音声を収録したQRコードが掲載されています。この音声は物語の「音」。登場人物たちの会話、物音。読者に語り掛けてくるこの「音」は、物語を推理するための鍵となり、真相でもあります。まだ見ぬ読書体験をしたい方に是非おすすめします。文章と音声を掛け合わせた異色ミステリ本作は、文章と音声を掛け合わせた異色のミステリです。表題作『聞こえる』は、登場人物と同じ音声を読者に聞かせることで、まるで物語の登場人物になったかのような感覚を味わえます。『にんげん玉』は、文章を読んだ時に思った物語の真相が、音声を聞く事でひっくり返りました。『セミ』は、音声の遠近感を上手に利用し、一つの音声で二つの解釈を生み出しました。『ハリガネムシ』も音声の絶妙なゆらぎによって結末が推理出来る仕掛けになっています。『死者の耳』は、物語の答え合わせが、音声を聞く事によって察せられるようになっていました。物語における音声の効果は、どの話もとても良く考えられていると思いました。ただ、正直な感想を述べると私には少し合いませんでした。収録されている音声を聞く事で謎が解ける、という仕掛けは面白く、全五篇それぞれ仕掛けが違う、という点も飽きさせず楽しく読めたのですが、
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