週刊文春ミステリーベスト10

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【書評】夕木春央『方舟』の要約と考察/犯人=生贄

閉ざされた地下施設で、殺人事件が起きました。前日に起きた地震の影響で出入口は塞がれ、地下水が流入し水没が間近な地下施設で。地下から脱出する方法は1つだけ、ただその方法を使うと、1人が無残な死に方をすることになります。しかし1人を生贄にすれば、他の全員が助かります。誰を生贄にするべきか、それは明らかです。緊急事態の地下施設で殺人を犯した、殺人犯を生贄にするのが妥当でしょう。地下施設が水没するまで1週間、何としても犯人を見つけ出さねばなりません。犯人=生贄です。
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【書評】米澤穂信『満願』の要約と考察/人間の心の闇を覗き見る

表題作である『満願』をはじめ6編から成る短編集。短編集なのですが、それぞれの物語がまるで一冊の本を読んだかのように重厚でした。本作は一貫して人間の心の闇を描いています。作中ある人は自らの信念を貫き通すために、またある人は秘密を守り切るために、もしくは心が弱すぎるがために、一線を越えてしまいます。どの物語も犯人を暴くようなミステリではありませんが、真相に近づくにつれて、読みながら感じる違和感がどろどろとした恐怖に変化します。また、題材が全て異なりトリック、結末もどれも鮮やかなため永遠に読んでいたい没入感を覚えました。上質な短編ミステリを探している方におすすめできる小説です。
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