【書評】『印象派で「近代」を読む』 -光のモネから、ゴッホの闇へ

中野京子・著


時代とともに、絵は変わる。
でも、“人間の心”は変わらない。

19世紀後半のフランスに起こった絵画運動で、現代日本でも絶大なる人気を誇る「印象派」。“光”を駆使したその斬新な描法によって映し出されたのは、貧富差が広がる近代の「矛盾」という“闇”でもあった。マネ・モネ・ドガからゴッホまで、美術の革命家たちが描いた“近代”とは――。
*電子版では、絵画の多くをカラー画像で収載しています。
*著者の話題作『「怖い絵」で人間を読む』につづく〈ヴィジュアル新書〉第2弾!

(NHK出版新書より)

書評




印象派とは、どんな”イメージ”を持っているだろうか。



やわらかい色彩、まるで光を映したのかというように明るく、自在で魅力的なタッチ。

多くの共通認識はこうだろう。

しかし本書を読むと、その認識は少なからず覆される



印象派の時代

印象派を語るうえで外せないもの、それは時代だ。

印象派は現代ではごく当たり前に受け入れられ、世界中で愛好されているが、

19世紀後半のパリではそうではなかった。

批評家からは皮肉交じりに酷評され、一般的な認識としては嘲りの対象であった。

それも、かつてのパリの絵画の常識を考えれば納得はいく。

当時は新古典主義の考え方が浸透しており、神話や重厚な歴史をテーマに描かれていた。

粗のないきめ細かな仕上げ、写実的なデッサンによる美しさ、安定した構成が重要視された。それは印象派が掲げる技法や構図とは正反対のものだったのである。


印象派とは、穏やかなイメージとは異なる、ある種の反逆性を秘めているのだ。


本書『印象派で「近代」を読む』は、印象派絵画の解説とともに、その時代背景においても深く言及されている。

著者は本文中でこう語る。

”光”を駆使したその斬新な描法が映し出したのは、貧富差をはじめ、近代社会がつくりあげた矛盾の”闇”であった

(本文より)



印象派は、絵画から神話や歴史を切り離そうとした絵画運動だが、はからずもその歴史は一つの興味深い物語のようだ。





知識は世界の解像度を上げる。

印象派絵画を鑑賞する際のひとつの参考図書として、本書を手に取って見てはいかがだろうか。




※以下考察・感想。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。






私は印象派絵画が大好きなので楽しく読めた。

さすがの中野京子さん。分かりやすく読みやすい解説書なので、初心者の入門書としても良いと思う。

特に、ドガへの言及が目立つ気がした。あとがきを読むと、それもそのはず。本書は2010年秋の「ドガ展」(横浜美術館)で著者が行った講演「ドガの時代」を基に書き下ろしたものだそうだ。ドガは個人的にはバレエロリコン変態おじさんだと思っているが、そのあたりも気になる人は本書を読んだ上で調べてみて欲しい。

印象派絵画は、西洋絵画の中では神話や聖書の知識がなくても理解ができ、自分の感じるままに鑑賞できることが魅力のひとつだが、本書を手に取ることでまた違った楽しみ方が増えた。絵画鑑賞は本当に面白い。



恐らく予算の関係で文庫版はフルカラーではないのだが、電子版では絵画の多くをフルカラーで収載しているそうなので、もしかしたらkindleの方がより絵画を楽しめるかもしれない。




著者紹介

著者である中野京子(なかの・きょうこ)さんについて、

北海道出身。早稲田大学講師。専門はドイツ文学、西洋文化史。『「怖い絵」で人間を読む』『怖い絵』『怖い絵2』『怖い絵3』『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』『危険な世界史』『残酷な王と悲しみの王妃』『名画の謎 ギリシャ神話篇』等、多数の著書がある。

「絵画は“見る”よりも“読む”ほうが先」という新たな鑑賞法を説き、絵画から時代をみる数々の良作を残す。



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