【書評】木爾チレン『みんな蛍を殺したかった』の要約と考察/みんな誰かを殺したいほど羨ましい。

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こんにちは、lamです。今回は『みんな蛍を殺したかった』木爾チレン・著についてご紹介します。

内容紹介

本のあらすじ

「女による女のためのR-18文学賞」優秀賞受賞者である著者が、原点に立ち返り、少女たちのこころの中に巣くう澱みを鮮烈な感性で抉り出す。



京都の底辺高校と呼ばれる女子校に通うオタク女子三人、校内でもスクールカースト底辺の扱いを受けてきた。そんなある日、東京から息を呑むほど美しい少女・蛍が転校してきた。生物部とは名ばかりのオタク部に三人は集まり、それぞれの趣味に没頭していると、蛍が入部希望と現れ「私もね、オタクなの」と告白する。次第に友人として絆を深める四人だったが、ある日、蛍が線路に飛び込んで死んでしまう。真相がわからぬまま、やがて年月が経ち、蛍がのこした悲劇の歪みに絡みとられていく―― 少女の心を繊細に描く名手による初のミステリ作品

(二見書房より)



スクールカースト最底辺のオタク女子三人と、誰もが羨む容姿を持つ美少女転校生の物語。

物語は登場人物たちそれぞれの目線で進んでいき、丁寧に心情が描かれています

女子高生独特の無敵感、自分勝手に物事を捉える感じが見事に表現された作品です。




ーーあなたは、誰かを殺したいほど羨んだことがあるでしょうか。

登場人物のオタク女子3人は、

自らの底辺な環境に絶望し、二次元の中の現実とは異なる世界に逃避するしかありません。

そうすることでつらい現実から自分を守っていました

しかし、ある時

自分とは全く違う、欲しいものをすべて持っている理想の人物が現れました。

あなたはその人をまずにはいられるでしょうか。



殺したいほどに、羨ましい



...彼女が悪いわけではないのです。

ただ、目の前に理想過ぎる人物が現れた時、

存在を消さなければ”あなたの心が保てない”のです。



本書は少女のこころ、また思春期の残酷性が見事に描かれています。

あのころ仄暗い青春時代を過ごした方に是非。


こんな人におすすめ

少女の闇が好きな人

救いのない小説が好きな人

平成初期~中期に青春時代を過ごした人


著者紹介

著者である木爾チレン(きな・ちれん)さんについて、

1987年京都府出身。2009年、大学在学中に執筆した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR-18文学賞」優秀賞受賞。2012年『静電気と、未夜子の無意識。』を出版しデビュー。その他の小説に『蝶々世界』『アイドル生徒会!』『Just Be Friends.』『DEEMO-Last Dream-』『殺戮の天使』『わたしのこと、好きになってください。』『これは花子による花子の為の花物語』『ぜんぶ、藍色だった。』『私はだんだん氷になった』『そして花子は過去になる』等、多数の著書があります。

作風としては、少女の心の機敏を繊細に捉えた作品を多く執筆しています。

ボカロ、ゲーム等のノベライズにも多く携わっており若い世代からの評価も高いです。






※以下感想・考察。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。

『みんな蛍を殺したかった』の感想・考察


暗黒の時代

女子高生という、ある意味無敵で、それゆえに恥ずかしい暗黒の時代

読みながら”あのころ”を思い出し、読んでいて懐かしいけれど恥ずかしく黒歴史が抉り出されるような嫌な気持ちになりました。これは間違いなくイヤミス。

おそらく平成半ばで青春時代を過ごした人には、時代背景も丁度で描写に共感することが多いのではないでしょうか。

二次創作サイト、キリ番、夢女子、花鳥風月のプリクラ、EASTBOYの紺ソックス、等々かつての言葉が出てくるたび懐かしい気持ちになりました。このあたりを懐かしく感じる人、おすすめです。


しかし、とにかく本作はオタクの扱いがひどい

今でこそオタクは文化として扱われ、趣味として語っている人が多く感じますが、確かに昔は日陰者でしたね。今が多様性として扱われる時代になってよかったです。


作中では結局誰も幸せになれませんでしたいえ、蛍として死ねた栞だけは幸せなのでしょうか?

雪、桜は大人になっても過去のコンプレックスをずっと引きずっています

少女時代の立場からずっと逃れられていない

確かに、思春期の頃の気持ちは大人になっても色鮮やかに残っているのかもしれません。

個人的にはもうあのころとは生きる世界は違うのだから、あんな狭い閉鎖された世界のことは忘れて自由に生きればいいのにと思いますが、

そうはいかない人も世の中には多いのでしょう。


蛍と【フレネミー】


蛍はいわゆるフレネミーと呼ばれる人物でしょう。

フレネミーとは、友達のふりをした敵。フレンド(友達)+エネミー(敵)を組み合わせた造語で、もとはアメリカの大人気ドラマ「SEX AND THE CITY」で用いられた名称です。

【フレネミー】は表面的には魅力的ですが、その本心は他人を一段劣った立場に留めおくよう策を弄し、意のままにコントロールしようとします。

しかし、蛍はそのようにしていい理由があると信じ切っています。

なぜなら今まで酷い目にあってきたのだから。

だから好きなように相手を支配することが出来る、していいのだ。

ーーと、彼女自身思い込んでいるところが、まだ人としては未熟で自分勝手な性格の女子高生らしさが表れていて、それもまたリアルで良いですね。

蛍だけでなく、雪も、桜も、栞も自分が一番可哀想だと思っています。

自分が一番可哀想だから、何をして良いとさえ思っています。

そのままでいたら、悲劇にしかならないのに。


本書は、少女のこころの繊細さが詳細に描かれている作品です。




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