井上真偽・著
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史上初! ひとつの事件にふたつの真実
古き良き商店街で起きた不穏な事件。探偵役は四兄弟と三姉妹、事件と手がかりは同じなのに展開する推理は全く違う!? 〈Sister編〉との「両面読み」がおすすめです!(小学館より)
ぎんなみ商店街近くに住む元太・福太・学太・良太の兄弟。母は早くに亡くなり父は海外赴任中だ。ある日、馴染みの商店に車が突っ込む事故が起きる。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死した。事故の目撃者は末っ子で小学生の良太。だが福太と学太は良太の証言に違和感を覚えた。弟は何かを隠している? 二人は調査に乗り出すことに(第一話「桜幽霊とシェパーズ・パイ」)。
中学校で手作りの楽器が壊される事件が発生。現場には墨汁がぶちまけられ焼き鳥の串が「井」の字に置かれていた。学太の所属する書道部に犯人がいるのではと疑われ、兄弟は真実を探るべく聞き込みに回る(第二話「宝石泥棒と幸福の王子」)。
商店街主催の「ミステリーグルメツアー」に随行し、長男で料理人の元太は家を空けている。学太が偶然脅迫状らしきものの断片を見つけたことから、元太が誘拐事件にかかわっている可能性が浮上。台風のなか兄の足跡を追う福太たちに、ある人物が迫る!(第三話「親子喧嘩と注文の多い料理店」)
書評
「同じ事件と手掛かりなのに、全く別の推理とストーリーが展開する独特の構造を持ったミステリ」という前評判を聞きつけて購入した。
人の数だけ真実がある
物語は、かつて寺の門前町として栄えた通りに位置するぎんなみ商店街を舞台に語られる
Brother編の主人公は、ぎんなみ商店街を見下ろす坂の上のマンションに住む4兄弟。長男元太、次男福太、三男学太、四男良太。
彼らの名前の由来はとある絵本にあり、登場人物のキャラクターの名前になぞらえている。また、兄弟それぞれの性格もそれに由来する。
元太の「元」は元気の「元」―自分の力で誰かを元気づけられるように。
福太の「福」は幸福の「福」―誰よりも幸福な人間になって、それで周りの人も幸せにするように。
学太の「学」は学びの「学」―色々な人生経験を積むように。
良太の「良」は良心の「良」―ずるいことはしない。困っている人を見たら助けてあげる。自分の心に恥じない生き方をするように。
絵本になぞらえている理由として、兄弟の母が絵本作家だったことが関係する。
ただ、作中では既に亡くなってしまっているが。
兄弟は母の思いを胸に、街で度々起こる事件を解決していく。
解決する事件は殺人事件等のような重たいものではなくちょっとしたものだ。
ただ、兄弟は事件を解決することで、母との思い出を再確認し、家族の絆を深めていく。
ぎんなみ商店街を舞台に語られる"家族愛"
Brother編は家族の人物描写がとても豊かだ。
特に、個性ある兄弟の得意なところを生かしながら、仲良く推理をする様子は微笑ましい。
小さな商店街を舞台に紡がれる家族愛。
それぞれの人物の意思が、商店街の事件を解決に導く。
また、Brother編は各章それぞれが実在する絵本をテーマに描かれている。
だからだろうか、物語はどこか暖かく、やさしい。
人の数だけ真実がある。
『ぎんなみ商店街の事件簿』は、一つの事件を、それぞれの人物の視点から多面的に捉えた物語である。
『ぎんなみ商店街の事件簿』特有の、本の構成について
一つの手がかりに二つの謎
どちらから読んでも謎解きが成り立つ
本書はこの特有の構成が魅力の一つだ。
読後の感想としては、どちらか片方だけ読んでも話は纏まっているが、少しだけは謎が残る状態、というところだろうか。
よって、どちらか片方だけ購入しても問題はないが、できれば二冊とも購入することが望ましい。
また、本作は一冊につき3編の物語が描かれているが、それぞれもう一冊の3編と連動している。Sister編の第1話とBrother編の第1話は同じ事件を扱っていて、第2話、第3話も同様に連動している、といった具合に。
だから、あえて読み方を指定させてもらうと、Sister編第1話を読み終わったらBrother編第1話を読んでほしい。(Sister編とBrother編どっちを先に読むかは読者にゆだねる)第2話、第3話も交互に読み進めることで、この物語をより深く楽しめるだろう。
ちなみに管理人は、第1話S→B、第2話B→S、第3話S→B のように読み進めた。
Sister編とBrother編はどちらを先に読んでも問題はないように思えたが、おすすめとしてはSister編を先に読んだほうが分かりやすく、より物語に没頭できるかなとは思った。
『ぎんなみ商店街の事件簿』Sister編+Brother編併せての感想は、Sister編にて述べている。▼
著者紹介
著者である井上真偽(いのうえ・まぎ)さんについて、
神奈川県出身。年齢、性別不明。2014年『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』でメフィスト賞を受賞しデビュー。『探偵が早すぎる』は連続ドラマ化され話題になる。その他の小説に、『その可能性はすでに考えた』『ベーシックインカムの祈り』『ムシカ 鎮虫譜』『アリアドネの声』等、多数の著書がある。
作風としては、徹底的にロジカルに、今までにないような構成の小説を生み出し続けている。
『ぎんなみ商店街の事件簿』は、小学館から出版されている小説誌「STORYBOX」と「きらら」に二誌同時連載として発表された。
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