長野まゆみ・著
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銀色と黒蜜糖―。白い野ばら咲く庭に住みついた2匹の美しい猫と同じ名前を持った2人の少年は何者なのか?目覚める度により深い眠りにおちてゆく少年月彦。その不思議な夢の中で繰り広げられた真夏の夜のフェアリー・テール。
(河出書房新社より)
書評
月彦が迷い込んだのは、現実と夢の狭間の世界。
月彦は夢を見る。
その夢が覚めた時、月彦は一体どこにいるのか。
いつから夢の中にいて、どこまでが夢の中なのか。
何故そこにいるのか。
月彦は夢のような世界の中で、銀色と黒蜜糖と出会う。
知り合いのようで知らない少年たち。
彼らは一体誰なのか。
白い野ばらの花弁が降り注ぐ学園では、
まるで水に絵の具が溶けていくように
その様相は姿を変えていく。
野ばらの垣根を越えられない猫のように
月彦はその世界から出られない。
何もかもが夢の中。
いつまでも続く、耽美な夢の世界に浸りたい方に是非。
※以下考察・感想。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。
銀色と黒蜜糖
長野まゆみの初期の作品、『野ばら』。
登場人物は不思議な世界に迷い込む月彦と、銀色と黒蜜糖。
不思議な彼らは、同著の『夏至祭』、『銀色と黒蜜糖』でも登場する。
それぞれすこし性格は異なる様にも感じるが。
彼らだけでなく、理科室、鉱石、といったモチーフも、長野作品に再三登場する。
長野まゆみの文章を初めて読んだときの感想は、まさに衝撃。
難しい漢字と平仮名を交えた、どこか古文調な文体。豊富な語彙。そう、まるで宮沢賢治のような、読むと綺羅と輝く耽美な文章。
長野まゆみの世界観に嵌ってしまい、彼女の物語は恐らく殆ど読み終えたと思う…。
私だけでなく、そんなファンは多いのではないだろうか。
『野ばら』は、そんな長野まゆみの魅力が十分に伝わる作品だろう。
長野作品、最初の書としても、とてもおすすめだ。
著者紹介
著者である長野まゆみ(ながの・まゆみ)さんについて、
1959年東京都出身。1988年『少年アリス』で文藝賞を受賞しデビュー。『冥途あり』で泉鏡花文学賞と野間文芸賞をW受賞。その他の小説に、『天体議会』『左近の桜』『レモンタルト』『銀河の通信所』『新世界』『白昼堂々』『魚たちの離宮』『レプリカキット』『鉱石倶楽部』『雨更紗』『雪花草子』『野川』等、多数の著書がある。
作風としては、独自の美意識を反映した耽美な文章が特徴。幻想文学からSF迄幅広い作品を生み出す。自作の表紙等を描くイラストレーターとしての一面も持つ。
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