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【書評】『爆弾』 -東京、炎上 | PLANETFORM

【書評】『爆弾』 -東京、炎上

呉勝浩・著


★★★祝・W1位!!★★★
日本最大級のミステリランキング、『このミステリーがすごい! 2023年版』(宝島社)、『ミステリが読みたい! 2023年版』(ハヤカワミステリマガジン2023年1月号)国内篇で驚異の2冠!!
これを読まねば、“旬”のミステリーは語れない!

東京、炎上。正義は、守れるのか。


些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

(講談社より)

書評



『このミステリーがすごい!』『ミステリが読みたい!』で驚異の二冠に輝いた本作品。
そのネームバリューに惹かれ手に取る。

本書は、自分の奥底にある、差別や偏見が抉り出されるような物語だった。





あなたは今生きる社会に満足しているか。



恨みとまではいかなくとも、少しの文句くらいはあるのではないか。



しかしそこで、社会自体を壊してやろうと思う人はどのくらいいるのだろうか。

「明日隕石が落ちて、予定のテストがなくなればいいのに…」とか。

そのくらいは思う人は、もしかしたら“普通”にいるのかもしれない。



しかし、実際にこの手で、社会に対して裁きを下す人はそう多くはないだろう。



“普通”は考える。それによって傷つく人のことを。

“普通”は考える。周囲の悲しむ人のことを。

“普通”の人には想像力があるから。

“普通”は思い留まる。





しかしこうも思わないだろうか。



もしもその被害にあう人が、とても”普通”ではない社会不適合者であったら。

何十人も殺した連続殺人犯で、裁きを下されるべき人であれば。

もしかしたら、どうなろうとかまわないのではないか…?



人間には命の優劣がある。

未来ある子供は助ける。それは努力しよう。

しかし自らの力には限界があるから、社会の屑の命は見捨てざるを得ない。




”普通”に考えて仕方ないから。





※以下感想。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。






とても面白かった!…が、

犯罪をする人の気持ちが理解できなさ過ぎて、スズキタゴサクが話している内容は殆ど訳が分からなかった。


…しかし、文章を読み進めるごとに、なにか自らの黒い感情が湧き出てくるのは感じた。

何かがスズキタゴサクと共鳴するようなこの感覚。

そしてこの黒い感情こそが、作者が本を通じて伝えたいことなのだと思う。


命の選択


黒い感情というのは、無意識に人に対して優劣をつけている、というところ。

"それ"が初めに起きたのは、作中で起こる「子供の代わりに路上生活者が亡くなった爆発」でのこと。

この時、物語を読んでいた私は、子供が無事だったことにほんの少し安堵した。

すぐに、いやいやそれも駄目だ!と理性が戻ってきたものの、その一瞬、そのほんの少しの感情でさえ本来ではあってはならないものだ。

現代に生きる私たちは、命は平等なものだと教わる。

亡くなっていい命などないと教わる。

しかし、多くの人は上記のような爆発が起きた時、子供の命が助かって良かった、と思ってしまうと思う。命は平等だと教えられているのにも関わらずだ。

それは、無意識に人の命を選んでいることに他ならない。


命の選択は、物語のなかで常に、登場人物たちに課せられている。

作中の一例として、こういったこともあった。

とあるシーン、目の前で相棒ともいえるような大切な人が大怪我を負う事件があった。いつ東京のどこかで爆発が起きるか分からない、そんな時にだ。

その瞬間を目にした女性刑事ー倖田は、迷わず同僚を助けるために救急車に同乗した。本来ならば、東京を爆弾から救わなければならないのに。何千万ともいえる民衆の命ではなく、目の前の大切な人の命1つを選んだ。

彼女がしたのはそれだけではない。あろうことか、同僚を生死の境に追い込んだ爆弾犯を殺しに取調室まで乗り込んできた。殺していい命など本来はないはずなのに。また命を選んだ。


それはまさしく、心が着火された瞬間とでもいうのだろうか。その感情が積み重なり高ぶったとき、意思が爆発するその瞬間。彼女の心は爆発していた。一歩間違えれば本書の犯人たちのようになっていただろう。

彼女だけではない。物語には、まだ”平常”であるものの、いつその心が爆発するのか危うい人物が複数存在する。いや、ほぼ全ての登場人物がそうだ

世の中に生きる人は誰しも、心に爆弾を抱えている。

そう思わざるを得ない作品だった。


著者紹介

著者である呉勝浩(ご・かつひろ)さんについて、

1981年青森県出身。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2018年『白い衝動』で大藪春彦賞、2020年『スワン』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞。2022年『爆弾』は「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」のランキングで1位を獲得している。その他の小説に『永久夜』『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』『おれたちの歌をうたえ』等、多数の著書がある。

作風としては、重厚な社会派ミステリを得意とし、現代社会の暗部を抉り出すような小説を次々と生み出している。



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