【書評】『歪み真珠』 -それは夢か現か、荘厳美麗な幻想小説

山尾悠子・著


死火山の麓の湾に裸身をさらす人魚たち、冬の眠りを控えた屋敷に現れる首を捧げ持つ白い娘…、「歪み真珠」すなわちバロックの名に似つかわしい絢爛で緻密、洗練を極めた美しき掌編15作を収めた物語の宝石箱。泉鏡花文学賞に輝く作家が放つ作品は、どれも違う鮮烈なヴィジョンを生み出す。ようこそ!読み始めたら虜になってしまう、この圧倒的な世界へ。

(筑摩書房より)

書評


このような美しい文章を紡ぐことが出来る才に感服する。





本書は15篇から成る掌編作品集。


歪み真珠

『歪み真珠』とは、芸術様式の一つ「バロック」の原義とされる。

広く知られるように「バロック」とは、ルネサンス後の16世紀末〜18世紀前半にヨーロッパで流行した豪壮・華麗な芸術様式であり、転じて不条理、不整形なものの意。



その名を冠する本作は圧倒的な「荘厳」。

洗練された優美な文体、物語の細部に至るまで緻密に描かれた装飾は見るものすべてを魅了する。

物語の一遍一遍がまるで宝石の粒のようだ。

しかし、その粒をふと見たとき、なものが紛れている。



物語のそれぞれに繋がりはない。

しかし、一つの大きな世界の中の出来事としては繋がっているのだろう。

まるで澄んだ静謐な空間の中に夢を見るように迷い込み、進んでも戻っても出口がないような。

しかし不思議と恐怖は無い。

この世界に永遠に浸りたい、美しき宝石たちを綺麗に陳列して、唯ひたすらに愛でていたい、というような快楽すら感じる。


泉鏡花文学賞を受賞した著者による珠玉の掌編作品集。

煌めく夢のような世界を堪能したい方に是非。



※以下感想。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。






初めての山尾作品はとても難解であった。

しかし、本作は山尾作品の中では初心者向けの易しい本らしい。

他の作品は果たして読めるのだろうか……。

だが、分からないなりに物語が発する美しさに魅了された。

魅了されたというべきか、させられたというべきか。山尾ワールドの中に無理やり放り込まれた気分。

耽美なのだが、どこか静謐で硬質な文章は、物語から心を離させない。

感想を言葉にするのがとても難しい...。兎にも角にも美しかった。

また、掌編のタイトルも素晴らしい。「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」「聖アントワーヌの憂鬱」「ドロテアの首と銀の皿」「アンヌンツィアツィオ-ネ」「夜の宮殿の観光、女王との謁見つき」と、眺めているだけでうっとりとする。

この男子禁制の少女趣味の世界観が最高に好みだ。



著者紹介

著者である山尾悠子(やまお・ゆうこ)さんについて、

1955年岡山県出身。 1975年『仮面舞踏会でデビュー。2018年『飛ぶ孔雀』で泉鏡花文学賞、日本SF大賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。その他の小説に『夢の棲む街』『仮面物語』『オットーと魔術師』『角砂糖の日』『山尾悠子作品集成』『ラピスラズリ』『夢の遠近法』『山の人魚と虚ろの王』等、多数の著書がある。

作風としては、シュールレアリスムに強い影響を受け、幻想文学の稀有な書き手として、読者を優美な世界へと誘う。



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