【書評】『ある閉ざされた雪の山荘で』 -全員役者、全員容疑者

東野圭吾・著


1度限りの大トリック!
劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか? 驚愕の終幕が読者を待っている!

(講談社より)

書評


映画化をする(2024年新春)とのことで購入。




物語は一通の手紙から始まる。


ある「閉ざされた」雪の山荘に集められた役者たち。

山荘は記録的な大雪のせいで、外に出ることも叶わない。また、雪の重みで電話線が切れ、連絡手段も交通手段もない。

役者たちは隔離された山荘に閉じ込められてしまった。

雪は依然として降り続け、救助は来ない。

そんな中、最初の殺人が行われてーー








―という〈設定〉の物語だ。

実際には閉じ込められてなどいない。

手紙のなかで、まるで閉じ込められたかのように振舞えと指示されただけ。

これは言うなれば舞台稽古だ。

殺人も起きない。










―かと思っていた。



その混乱の様子を一人眺めるは微笑む


東野圭吾の隠れた名作と名高い本作品。

ある閉ざされた雪の山荘での本格ミステリを堪能せよ。




※以下感想。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。








茶番であった。

この感想はあながち間違いではないだろう。

なぜならこの物語の探偵役自身が最後に茶番だと言っているからだ。

クローズド・サークルに見せかけた舞台設定

本書で特筆すべき点は、全てが「設定」だというところ。

ある雪の山荘、というクローズド・サークルに見せかけた「設定」。
閉じ込められた中で殺人事件が起きる、という「設定」。
そして、そんな中で各々の人物が自我を持ち行動を起こしていく、という「設定」。

「設定」に縛られた中で起きる事件に、
登場人物は何が芝居で、何が本当に起きている事なのか判断が出来ず、次第に混乱していく。

この物語は、そんな環境に身を置いた登場人物たちの心理描写が主な見どころだろう。


雪の山荘というクローズドサークル。正統派ミステリにありがちな設定のなかで行われる舞台稽古。そこで起きる殺人事件は何が現実で何が芝居なのかわからない。翻弄される役者たち。興味惹かれる「設定」であった。

しかし、展開については正直読めてしまった。

まず物語の最序盤、ペンションに置かれた5冊の推理小説。この中にアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』があったことで、「あ、これ誰も死なないかもな」と察してしまった。東野圭吾だから深読みしすぎたのかもしれない。

それだけではない。物語を読み進めるうち、小説が三人称視点で描かれていることが分かる。これに気付いた時、この物語は誰か、そう、真犯人がペンションで行われていることをまるで舞台のように観劇していて、その視点を読者に体験させているんだなと気付いてしまった。

これはもう物語の本筋だ。それに気づいてしまったからか、その後語られる物語に驚きはなかった。

唯一、直接手を下している犯人役が誰か分からなかったので、それだけを楽しみに読み進めた。


著者紹介

著者である東野圭吾(ひがしの・けいご)さんについて、

1958年大阪府出身。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。1999年『秘密』で日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』で直木賞、本格ミステリ大賞、2008年『流星の絆』で新風賞、2009年『新参者』でこのミステリーがすごい!、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で吉川英治文学賞、2016年『危険なビーナス』でミヤボン2016、2019年『恋のゴンドラ』でミヤボン2019、『沈黙のパレード』でミヤボン2021、2023年その華々しい経歴から第71回菊池寛賞を受賞。

作風としては、多彩なジャンルを論理的に分かりやすい情景描写で書き、エンターテインメント性の高い展開、さらには人物の微細な心情描写も秀逸なことで評価されている。

『ある閉ざされた雪の山荘で』は、1992年講談社ノベルスとして単行本が発行、1996年講談社文庫から文庫本が発表。第46回日本推理作家協会賞(長編部門)候補作。



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