【書評】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』の要約と考察/誰の嘘を信じますか？

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こんにちは、lamです。今回は『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成・著についてご紹介します。

内容紹介

本のあらすじ

【2022年本屋大賞候補作】
「犯人」が死んだ時、すべての動機が明かされる――新世代の青春ミステリ!

ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を
得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

（KADOKAWAより）

『六人の嘘つきな大学生』は、新進気鋭なIT企業「スピラリンクス」の内定を貰うための就職活動が主に書かれます。

「スピラリンクス」に入社すれば初任給破格の五十万円、

まさに人生が「変わる」。

そんな人生の分岐点に立つのは就活生、六名。

この六名は五千人以上の学生たちの中から選抜された、まさに優秀な就活生です。

その中から誰が選ばれるのか。

どんな人が選ばれるのか。

どうやって選考するべきなのか。

就職活動とは、

自分という人物を理想の人物という嘘で固め、

その嘘が評価される場です。

完璧に嘘で自らを塗り固められた人が、内定を得られます。

しかし本編は、そんな就活の様子を映すだけでは終わりません。

その完璧に練られた嘘が、選考中に《六通の封筒》によって破壊されます。

その《六通の封筒》には、

完璧であったはずの《六人全員分の過去の悪事》が、告発文として記されていたのです。

告発文がその場に現れた時、

完璧な人間たちはその塗り固められた嘘を無理やり剥がされてしまいます。

しかしここは選考の場。

冷静に嘘を重ね、時には過去を認めて誠実さを装い、

彼らはひたすらに内定をつかみ取ろうとします。

この作品のテーマは『嘘』

嘘に嘘を重ね、内定をもらった嘘つきは誰なのでしょうか。

こんな人におすすめ

就活をしたことがある人

現在の就活の選考方法に疑問を持ったことがある人

殺人事件が起きないミステリが読みたい人

著者紹介

※以下感想・考察。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。

『六人の嘘つきな大学生』の感想・考察

面白かったです！

読み進めるごとにどんでん返しがあり、展開の予想をことごとく超えてくる感覚は爽快でした。

月の裏側

本書を読んでいると、ところどころにキーワードのように【月】が登場します。

月　——　地球からは絶対に裏側が見えないって。それを聞いてから、意味もなく考えちゃうんだよね。月の裏側ってどんなふうなんだろうって

地球から【月】を見ているとき、その裏側は見ることが出来ません。

しかし、【月】の裏側は間違いなく同時に存在しています。

この【月】の例えは、

本書においては【人間の二面性】の仄ほのめかしとして例えられていると思います。

人間が何か行動を起こすとき、発言するときには、同時に見えない意図が存在するものです。

本書はまさに、その見えない意図を示唆するような物語でもあったと感じています。

作中、物語の展開が変わるごとに

登場人物に感じていた評価が一変するような展開が、何度も繰り返されます。

とんでもない悪人だと感じていたはずが、

「あ、やっぱりいい人じゃん」となります。

でもやっぱりずっといい人じゃんというわけでもなく、

「悪い心も持っているな」とも感じます。

それは【人間の持つ二面性】であり、

作中では【月】で例えて語られています。

まるで「察して」と言っているかのような、仄ほのかな例えです。

人を評価するって難しい。

見ているものが全てではないのですから。

それは就職活動という短い時間になればなおさら難しいでしょう。


ただ悲しいかな、

就職活動という場においては、見えるものが全てなのです。

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追記

映像化されてますね！(2024年12月現在)

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