【書評】シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』の要約と考察/夢が覚めても悪夢の中

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こんにちは、lamです。今回は『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン・著についてご紹介します。

内容紹介

本のあらすじ

閉じられた城に棲む暗き魂の少女たち
少女恐怖小説の名編、美しき狂気譚


あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。姉のコンスタンスといっしょに、他の家族が皆殺しにされたこの屋敷で、ずっと暮らしている……。惨劇の起きた資産家一族の生き残り。村人から忌み嫌われ、外界との交流も最低限に止める彼女たちは、独自のルールを定めて静かな生活を送っていた。しかし従兄チャールズの来訪をきっかけに、美しく病んだ箱庭世界は大きな変化をむかえる。“魔女”と称された異色作家が、超自然的要素を排し、無垢な少女の視点から人間心理に潜む悪意が引き起こす恐怖を描く代表作。/解説=桜庭一樹

(東京創元社より)


こんな人におすすめ

嫌な気持ちになる作品が好きな人

少女趣味な作品が好きな人

アメリカ文学の名作が読みたい人


著者紹介

著者であるシャーリイ・ジャクスンさんについて、

1916年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。その他の小説に『壁の向こうへ続く道』『絞首人』『処刑人』『鳥の巣』『日時計』『山荘綺談』『たたり』『丘の屋敷』等、多数の著書があります。

作風としては、日常と非日常の境界、日常生活のなかの人間心理の異質さを描くことで知られています。

2008年、アメリカでは彼女の名を冠したシャーリイ・ジャクスン賞が創設されました。






※以下感想・考察。内容についてネタバレを含んでいます。未読の方はご注意下さい。

『ずっとお城で暮らしてる』の感想・考察


悪意に満ちた作品でした。

メリキャットが創り出した美しき悪夢の世界に迷い込んだかのような、

あくまでも彼女の視点で語られた物語でした。


夢が覚めても悪夢の中



この物語は果たして現実だったのでしょうか。


メリキャットの主観でしか物語が語られないので、悪意に満ちた村人や卑しいチャールズ、

美しいと云われているお城でさえ、本当にそういうものであったのか疑問に思います。



メリキャットは作中お城が素晴らしい場所のように語っていますが、

恐らくはそうではないですよね。

本当に素晴らしいと思っていたのならば一家を毒殺していないはずです。

察するに、メリキャットは家族から虐待を受けていたのではないでしょうか。

ただ姉だけは優しくしてくれた。

だから愛する姉を除いた全員を毒殺し、好きな人しかいない幸せな世界を創り上げた。

そうして生活するうちに過去の記憶も塗り替えられ

まるで素晴らしい一家だったかのようにメリキャットは思い出すようになります。

本当は幸せな一家でありたかったのでしょうね。



チャールズの来訪は、そんなメリキャットにとってはとても嫌なものでした。

作中で語られるチャールズはとても卑劣に書かれます。

大好きな姉を奪おうとする、姉妹の仲を裂く邪魔ものだと。

あくまでも物語はメリキャットの視点で語られるので、読者もチャールズのことが嫌いになります。

しかし、よく考えてみましょう。

チャールズの来訪は、閉ざされた城にとって本当に悪いものだったのでしょうか。

ずっと姉妹がお城の中で暮らし続けることは良い事とは思えません。

家にあるお金もいつかは尽きるし、現実的に城にこもり続けるには不都合も多いでしょう。

チャールズの来訪は、姉であるコンスタンスを外の世界に連れ出し、

メリキャットもしがらみから逃れて自分の世界を生きるいい機会だったのではないでしょうか。

しかしこの物語はあくまでもメリキャットの視線なので、チャールズの存在はただの邪魔ものです。

メリキャットは火事を起こし、罪をチャールズに擦り付け、

ついでに毒殺し損ねた叔父も殺します。



そうして、メリキャットにとっては大好きな姉と二人きりで『ずっとお城に暮らしてる』

ハッピーエンドで幕を閉じます。



この作品を読み解くために大切なのは、

とにかくメリキャットの視点でしか物語が進まないという事です。

メリキャットは明らかに歪な考えを持っています。

そんな歪な頭の中で考えたような物語を果たしてそのまま信じ込んでいいのか、

すっきりとはしないぞわぞわする感覚を覚えました。


現実は誰にもわかりません。

メリキャットにとってはこの結末悪夢から覚めたかのような晴れやかさを持ちますが、

本当はまた、甘い悪夢の世界に迷い込んでしまったのではないでしょうか。






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