歴史

【要約】松田亜有子『クラシック音楽全史』 /クラシック音楽史を年表で解説。時代の変遷、代表的な音楽家まで

クラシックに多く触れる機会があったので、ざっくりと音楽知識を学ぶために西洋音楽史をまとめてみました。参考図書は『クラシック音楽全史』松田亜有子・著。本書は、クラシック音楽を楽しむために知っておくと良い知識、音楽の発展の歴史やその時代背景、作曲家の功績等を十分に学べる書でした。音楽史の入門書としておすすめできます。下記に本書から学んだ内容を年表にしてみました。古代:音楽の起源音楽は、自然の音から着想を得て、言語の持つ音韻から派生して生まれました。音楽の起源としては、最古の文明:メソポタミア文明まで遡ります。その遺跡からはハープや笛、太鼓等を奏でる人々の姿のレリーフが残されています。 紀元前520年頃、ピタゴラスによって初の音楽理論が提唱されます。これには現代まで繋がる「ドレミファソラシド」の発明が描かれていました。
日常

【書評】山田詠美『血も涙もある』の要約と考察/極上の“危険な関係”が行きつく先は

「私の趣味は人の夫を寝盗ることです」こんなことを言ったら、もう世間では非難轟轟でしょう。巷ではよく芸能人同士の〈不倫〉が騒がれています。そもそも〈不倫〉とは、漢字二文字では到底納まりきらない男女の愚鈍な姿態が存在します。血も涙もある人間の、滑稽さ、残酷さ。其のすべてが焙り出されるものです。本書『血も涙もある』は、そんな不倫を当事者の視点によって描いています。本書は全十章、交互に展開される当事者たちのモノローグで語られます。魅惑的な【料理】によって匂い立つ、男女の危険な関係本小説で特筆して面白いのは、男女の恋愛の官能性を引き立てる隠喩として、【料理】を用いているところです。【料理】を比喩表現として使用する場合、小説でよく見るのは、登場人物の心情表現を【料理する際の仕草】で表したり、目の前の人やものに対して、その状態を【料理のメニュー】で表したり、といったところでしょうか。しかしこの小説の【料理】の使い方は一味違います。【料理】の持つ匂い、見た目、その構成材料に至るまで、各々の【料理】の特性が複雑に絡まり合い、【料理】の持つ全てをもって"不倫"という男女の不安定な関係性を表しています。もうなんて説明したらいいのかすら分かりませんが、
純文学

【書評】長野まゆみ『野ばら』の要約と考察/真夏の夜のフェアリー・テール

月彦が迷い込んだのは、現実と夢の狭間の世界。月彦は夢を見ます。その夢が覚めた時、月彦は一体どこにいるのか。いつから夢の中にいて、どこまでが夢の中なのか。何故そこにいるのか。月彦は夢のような世界の中で、銀色と黒蜜糖と出会います。知り合いのようで知らない少年たち。彼らは一体誰なのか。白い野ばらの花弁が降り注ぐ学園では、まるで水に絵の具が溶けていくようにその様相は姿を変えていきます。野ばらの垣根を越えられない猫のように月彦はその世界から出られません。何もかもが夢の中。いつまでも続く、耽美な夢の世界に浸りたい方に是非。
純文学

【書評】谷崎潤一郎『春琴抄』の要約と考察/究極美麗なマゾヒズム

『春琴抄』はマゾヒズムを究極まで美麗に描いた文学です。以下、内容を要約しています。未読の方はご注意下さい。美しき盲目の琴曲の名手、春琴。しかしその性格は驕慢で我儘。ある日春琴に、世話係として丁稚奉公の佐助があてがわれました。佐助は、春琴からどんなに理不尽に折檻を受けても、献身的に尽くし続けます。それは不気味なほどに。やがて佐助と春琴は深い関係になり、子を儲けます。ですが気位の高い春琴は、その子を佐助との子と認めませんでした。両親は二人に結婚を勧めますが、佐助もそれを拒みました。そんなある日、春琴は何者かに熱湯を浴びせられ、顔に火傷を負います。美貌を失った春琴は、佐助に見捨てられることを恐れ、「見るな」と命じます。佐助はその言葉を受け、自らの両目を針で突き刺し、視力を失いました。そして、春琴と同じ世界を味わえることに、深く喜びました。春琴もそれを喜び、自分を理解してくれる佐助に感謝します。二人は涙を流しながら、抱き合いました。佐助は盲目となったことで、春琴の音楽がより深く理解できるようになりました。春琴は昔ほど高慢でなくなりましたたが、佐助はそれを望みません。厳しいお嬢様と、その奉公人の主従関係を拘りました。佐助の盲目の目には、いつまでも美しい春琴の姿を留めていました。
ミステリ

【書評】呉勝浩『爆弾』の要約と考察/東京、炎上

あなたは今生きる社会に満足していますか?恨みとまではいかなくとも、少しの文句くらいはあるのではないでしょうか。しかしそこで、「社会自体を壊してやろう」と思う人は、どのくらいいるのでしょうか。「明日隕石が落ちて、予定のテストがなくなればいいのに…」とか。そのくらいは思う人は、もしかしたら“普通”にいるのかもしれないですね。しかし、実際にこの手で、社会に対して裁きを下す人はそう多くはないでしょう。“普通”は考えます。それによって傷つく人のことを。“普通”は考えます。周囲の悲しむ人のことを。“普通”の人には、想像力があるから。“普通”は思い留まるはずです。しかしこうも思わないでしょうか。もしもその被害にあう人が、とても”普通”ではない社会不適合者であったら。
SF

【感想】萩原規子『西の善き魔女』全シリーズの要約と書評 -母の形見の首飾りが少女を導く。王宮へ、そして世界のかなたへ

美しくも厳しいセラフィールドの地、あかがね色の乙女と黒髪の眼鏡の少年は、居場所を追われ旅に出ます。片や亡き母の首飾りを頼りに片や異端の研究の末にそれは煌めく王宮へ、竜の住む森へ、世界の果てまで――この物語の主人公、フィリエルはいつでも真っ直ぐで、強い意志を持っています。フィリエルの騎士ルーンは、いつまでもただ一人の女性を想っています。物語を通して二人は互いにその身を案じ、相手を守ろうとし続けます。そんな2人の想いは物語を創り、世界をも救います。中公文庫版と角川文庫版について加えて、『西の善き魔女』には色んな版が存在するのでそれについても少し。大きく中公文庫と角川文庫の版がありますが、違いとしては、装丁が異なるだけでなく、刊行順も異なります。個人的には中公文庫版が好きです。ファンタジー児童書装丁画の大御所である佐竹美保さんによる美しい装丁画、刊行順も時系列となっており、読みやすいかと思います。角川文庫版は本編が1-5巻、外伝が6-8巻という構成です。そして『西の善き魔女』にはコミカライズ版もあるのですが、そちらも素敵です。桃川春日子さんの絵がとても合っていて、より世界観を想像しやすく、『西の善き魔女』を見せてくれます。
SF

【書評】萩原規子『西の善き魔女⑧真昼の星迷走』の要約と考察/共に居る未来のために、旅路の果てに

第六巻で完結している『西の善き魔女』ですが、本作第八巻「真昼の星迷走」にて遂に最終巻。数々の伏線、第六巻のその後、フィーリ(賢者)とバード(詩人)の謎と、本作にて物語は完結しました。まさかルーンが亡国の王子とは。(多分)フィリエルとルーンの今後、この世界の未来は読者の想像に委ねられますが、きっと強い意志で善き未来を創り上げていくのでしょう。もっと『西の善き魔女』の世界に浸っていたい気持ちはあれど、最後まで読めて良かったです。それにしても本書はルーンを中心に回っているのかというくらい、ルーンというキャラクターの魅力が凄いと思いました。どのキャラクターも魅力的で素敵なのですが、やはりルーンの人柄が特に印象に残ります。ルーンという人物を生み出してくれただけでも、著者萩原規子さんに多大なる感謝です。ありがとうございます!『西の善き魔女』を初めて読んだのは中学か高校あたり。当時ドキドキしながら読んだことを思い出しつつ、大人になって知識が増えたうえで読み返すと、また思うところがあります。考察については総評にて!
SF

【書評】萩原規子『西の善き魔女⑦金の糸紡げば』の要約と考察/美しくも厳しいセラフィールドの四季の調べ

美しくも厳しいセラフィールドの自然を舞台に、フィリエルとルーンの出会いが春夏秋冬を通して紡がれます。広大で閉ざされた世界での5人だけの生活。幼いフィリエルの戸惑いや葛藤、闇の中にいたルーンが自らを取り戻していく様子を、セラフィールドという大地が包み込んでいます。最後には断章として18歳になったフィリエルとルーンによる里帰りが語られます。第一巻で脱出したままの状態で残されたセラフィールドで、彼女たちは過去を追想し前へ進みます。エディリーンの墓参りの様子は2人だけの世界。読者の想像に任されます。ルーンが眼鏡を大切にしていた理由や、出番の少なかった博士やホーリー夫妻が描かれていて良かったです。冒険の旅が終わり、優しく温かい雰囲気の巻でしたね。ルーンのフィリエルへの想いが確固たるものと感じられるのも良いです。そして、遂に次巻は『西の善き魔女』最終巻。外伝3。シリーズが終わってしまうのは悲しいですが、少年少女の冒険を最後まで見届けたいです!
SF

【書評】萩原規子『西の善き魔女⑥闇の左手』の要約と考察/世界の果ての壁、そして竜の星

遂に本編完結しました!女王候補の決着は意外なものではあったものの、納得の結末でした。3人共々異なる魅力を持った女性で、しかし望む未来の根源は同じ。過去・現代・未来それぞれを担う『西の善き魔女』として国を存続させるのでしょう。私自身3人共大好きなキャラクターだったので良かったです。『西の善き魔女』シリーズは、巻ごとに全く様相が異なる世界観を持つことが魅力の一つですが、まさか第六巻ではSFになるとは…でした。これだけ世界観が変わっても一つの物語として読めるのがすごいです。壮大な物語だったので、本編完結の寂しさ半分、何となくまだ消化不良感は残りますが(博士の行方等)、それはまた外伝で語られるのでしょうか。まだ語られる物語があることを嬉しく思います。フィリエルとルーンが幸せでいて欲しいですね。外伝へ!
SF

【書評】萩原規子『西の善き魔女⑤銀の鳥 プラチナの鳥』の要約と考察/敬虔な乙女たちのアラビアン・ナイト

極彩色に彩られた衣服、鼻に香るスパイスの香り、異国情緒溢れる街並み。次期女王候補アデイルと、トーラス女学院文芸部長兼傍系王族であるヴィンセントは、東の帝国ブリギオンの侵略の狙いを探る為隣国トルバートに居ました。そこで出会うのは女王制反対論者や国家転覆を狙う者。アデイルたちは国家同士の諍いに巻き込まれていく――。本作は外伝で、主人公フィリエルもルーンも登場しませんが、この第五巻、個人的に一番面白かったかもしれないです。アデイル主役の冒険ファンタジー。命狙われる危機の中、恋愛要素も欠かせない。アデイルはルーンに似たティガという傭兵の少年と出会い、仲を深めていきます。アデイルの立場上残念ながら結ばれる未来は来ないと思いますが、アデイルとユーシスの既定路線よりお似合いです!傭兵団を味方につけてからのアデイルは、王宮内でお人形さんしている時よりよほど生き生きとしていて、もう女王争いを投げ打ってでもエゼレット(傭兵団)に加入して欲しいくらい。しかしそこで使命を忘れない真っ直ぐなアデイルがまた魅力的なんです…。アデイルはずっと魅力的なキャラクターでしたが、今回の物語でより輝きを増しました。ヴィンセントの再登場も嬉しいです。守られる可憐なお姫様と、賢く凛々しいお姫様。二人の見えない本音が、確固たる意志に変わる過程も良かったです。
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