【感想】萩原規子『西の善き魔女』全シリーズの要約と書評 -母の形見の首飾りが少女を導く。王宮へ、そして世界のかなたへ
美しくも厳しいセラフィールドの地、あかがね色の乙女と黒髪の眼鏡の少年は、居場所を追われ旅に出ます。片や亡き母の首飾りを頼りに片や異端の研究の末にそれは煌めく王宮へ、竜の住む森へ、世界の果てまで――この物語の主人公、フィリエルはいつでも真っ直ぐで、強い意志を持っています。フィリエルの騎士ルーンは、いつまでもただ一人の女性を想っています。物語を通して二人は互いにその身を案じ、相手を守ろうとし続けます。そんな2人の想いは物語を創り、世界をも救います。中公文庫版と角川文庫版について加えて、『西の善き魔女』には色んな版が存在するのでそれについても少し。大きく中公文庫と角川文庫の版がありますが、違いとしては、装丁が異なるだけでなく、刊行順も異なります。個人的には中公文庫版が好きです。ファンタジー児童書装丁画の大御所である佐竹美保さんによる美しい装丁画、刊行順も時系列となっており、読みやすいかと思います。角川文庫版は本編が1-5巻、外伝が6-8巻という構成です。そして『西の善き魔女』にはコミカライズ版もあるのですが、そちらも素敵です。桃川春日子さんの絵がとても合っていて、より世界観を想像しやすく、『西の善き魔女』を見せてくれます。